番外編〜風俗雑誌

 本来ならば博多編を綴るところですが、ちょっとばかり思うところがありまして、月曜日でもありませんが更新します。

 たまたまtwitterで『臨死!! 江古田ちゃん』の著者である瀧波ユカリさんがメンズサイゾーの記事「夢のような展開を実現!? 友達飲み会をSEXパーティへ昇華させるには?」について、「ほんとに怖い」と呟いているのを知り、当該の記事を読んだのです。ふだんはそんなことはしませんが、編集部に存念を質すメールをしました。(記事はもう削除されてますね)

内容を紹介すると、セックスパーティへの流れを演出する方法について書いたものです。
一言でいえば下種です。

「押せばそのままノリで受ける可能性も出てくる」
「グループの友達関係は修復不可能になると覚悟しておいた方がいい。よって、もう縁を切っても構わない女友達に対して実行すべき作戦といえる」

と、かつて早稲田大学のサークルで起きた強姦事件を地で行くような内容であり、何をか言わんや犯罪を教唆するものでしかない。

 書き手は風俗界隈に通暁しているようで、その御仁が「男にとっての夢は何だろうか。人それぞれ異なるだろうが、きっと多くの人は『夢=SEXパーティ』というはずだ」というわけですが、このような強姦をそそのかす記事が夢であっていいはずもない。

 ライターが心底思っているというよりも、連載のために無理くりに書いた気配が濃厚なんですが、強引でもこのような筋が夢の一語で通ると思ったのは、「嫌よ嫌よも好きのうち」「女はそれを待っている」という期待があり、それがある程度は男性に共有されているとの考えがあってこそ成立した記事でしょう。

 端的に言えば愚かですが、それが野放しにされているのが風俗界隈かもしれないと思うのですよ。という感慨を抱くのは、僕は一時期けっこうハードコアな、それこそ取り締まりの対象になるかどうかのきわどい写真を掲載したエロ本で仕事をしていたからです。

 僕に仕事を依頼してきたのは、まだ20代の編集長でした。
 彼女はそれまでに風俗店やAV女優にインタビューしてきて、表向きの記事では彼女たちは「男性を癒やしたいです♡」とか「セックスが好き!」などと、男性の夢に寄り添う内容を言ったふうにまとめていたのですが、本当は違うのだと。編集長が言うには「実際の彼女たちは本音はまったく違うところにある」のだそうで、それをなんとか取り上げたいと考えての打診でした。

 その考えに賛同したので、僕は仕事を引き受けました。

 そこで風俗で働いたり、AVに出演した人にインタビューを始めたのですが、彼女たちはまず取材にあたって敬語で接されることにひどく当惑した様子を見せました。いわく風俗誌の取材では初対面であってもタメ口や「どうせ好きでやっているんでしょ」といった態度がほとんどだったからだそうです。

 それにも驚きましたが、ともかく企画趣旨を説明すると、「本当に本当のことを言ってもいいんですか?」と何度も確認してくるのです。だから「本当にあなたの思っていることを言ってください」とお願いすると、彼女たちの口からただちに漏れてきたのは、呪詛の言葉でした。

「誰がセックスなんか好きでやっているか」「癒やしとか期待する客は気持ち悪い。バカじゃないかと思う」

本音をそのまま記事にしたら、企画は上層の意向で3ヶ月で打ち切りになりました。

短期間ではありましたが、彼女たちの、ときに生い立ちを含めての語りは、男性の夢とやらが得体の知れない妄想でしかないと知らされるには十分でした。

「男って気持ち悪いよね。死ねばいいのに」と、なんともいえない笑みを含んだ表情でそう言った人のことを今でも思い出します。
それだけに「もう縁を切っても構わない女友達に対して実行すべき作戦」などと痛痒も感じずに言ってしまう、迂闊という言葉では追いつかない鈍さに愕然とするのです。

その夢は誰かにとっての悪夢でもあるのです。

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15 Responses

  1. 高橋 征志 より:

     今回の記事は尹さんには珍しく直球ストレートな記事に思えました。
     だからかどうかは分かりませんが,私も今回の記事にはストレートに同意できました。

     愚かさとは,知性の欠落というより内省の欠落であるように感じました。

  2. しまづ より:

    すべての男性が、ペドロ・アルモドバルの『私が、生きる肌』を見てみればいいのにと思いました。

  3. 尹雄大 より:

    高橋さん
    たしかにいつもより捻りがありませんね。この手の話題に対しては、直球になってしまうんです。

    しまづさん
    観てみます!

  4. kskw より:

    本題とは外れますが、文中にあるインタビューというのは打ち切りになった後、なんらかのカタチでまとめられたのでしょうか?是非読んでみたいもので。

  5. 尹雄大 より:

    残念ながらまとめた形で残っていないです。

  6. kskw より:

    お返事ありがとうございます。うーんそれは残念。

  7. まつこ より:

    批判的なコメントをされている方もいますが、
    私にはこの記事を読んでも冷静でいられる方の方が恐ろしいです。
    やはりまだ男性目線でつくられた風潮が色濃く残っていると思いますし、それらをひっくり返す、あるいは中和していくには、尹さんのように女性の目線を理解できる男性の力が必要不可欠だと感じます。

    • 尹雄大 より:

      ありがとうございます。自分がこれまでに培った慣習的な考えの外に出る時、多少なりとも中和できるのではないかなと思っています。

  8. 高橋 征志 より:

     今読み返すと,失礼な物言いのコメントをしてしまいました。
     申し訳ありませんでした。

  9. サキ より:

    ホステスやってる友人の同僚の一人は自分の仕事が終わったら「男は死ね!」とロッカー殴りながら叫んでましたよ。
    友人はシングルマザーですが、日本だとシングルマザー、離婚した女性が生きていくとしたらホステス(娼婦)しかないんですよね。
    だから男はお気楽としか思えないし「これだから男は」と言いたくもなる。

  10. 尹雄大 より:

    高橋さん
    そんなことないですよ。気にしてません!

    サキさま
    均等とは言いがたい現実がいまなおあります。とりわけシングルマザーに厳しい世の中です。男であることに後ろめたさを覚えても、現実は変わらないので、とにかく自分のできることからやりたいと思っています。

  11. 小杉あや より:

    風俗嬢の本音を男性の妄想で成り立っている雑誌に載せようという編集者の心意気がまったく理解できません。優れた記述だったとしても読者が求めているものではないでしょうし、コンビニで一戸建てを売るようなもので早晩掲載中止になるのは商業主義の理だと思います。
    合コンからヤリコンへの記述の不快さは依頼内容を想像してライターへの同情が見られるのにジャンル違いの文章を提示した自身に対しては何の感慨もない点も気になりました。

  12. 尹雄大 より:

    編集者は妄想で成り立っているから風穴開けたかったのでしょう。求められているものだけに適応するのがすべての取るべき道ではありませんから。

    私は同情はしていませんよ。糊口をしのぐことに躍起になるサバイバルは誰しもとるところですが、それと自らが愚かになるのを許すのは別のことです。

    そしてジャンル違いの仕事を受けたことについては、生活のための仕事、他者の欲望に迎合することが生きるすべてではないと、私は考えているからです。

  13. 小杉あや より:

    ジャンル違いの対しては言葉足らず失礼いたしました。尹さんがもとから書かれているジャンルと違う仕事を請けたからジャンル違い、ということではなく、雑誌のカラーに合わないジャンル違いの仕事をよしとして仕事にした、(編集の責任もありますね)事について感慨がない点をさしたつもりです。

    この記事がツイッターであがってきて読みに参りまして、「風俗嬢の本音」とやらがまだ闇の中にあるという大多数の人間の(尹さんだけの考えではありません)認識に驚きまして発言させていただきました。

  14. 尹雄大 より:

    ジャンル違いの仕事であると承知してのことでした。本音を人権団体のNPOにだけに任せなくともよいかと思います。スキルで片が付くならまたしても自己責任に委ねるばかりでしょう。

    本音が闇の中にあるとは思いませんが、いまなお幻想が力をもっているのは確かで、あなたが驚く認識から始めるのも一つの手段だと思います。

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