ワーキングポリシー

【目指すもの】
文章を通じて、取材対象者の発想や考え方が立体的に浮かび上がるような記事を作成します。
インタビューを軸にウェブや書籍、雑誌媒体で記事の作成と編集構成を行います。
書籍では、宗教家や企業のイノベーター、戦災にあわれた方など専門的な知見をもつ、あるいは特殊な経験をしているものの、本にまとめる余裕のない人に代わり、構成を考案し、文章にまとめています。

【専門領域】
インタビュー記事の作成における得意分野は、アカデミズムの領域です。これまで数学から社会学、金融、文学といった専門家にインタビューを行ってきました。
学術的な知見を理解するには、段階を踏まえることが必要ですが、限られた字数の中で読者が腑に落ちるような構成を心がけています。
その上で、読み手の理解に引きつけてしまうことなく、瞠目という経験がもたらされるような文の運びとなるよう留意しています。
書籍や雑誌では、ストレートな綴り方よりも資料を読み込みつつ、じっくり話を聞き、観点を構築した上で文章にまとめることを身上としています。
また武術研究家の甲野善紀師範のもとで剣術や体術を、現在では中国武術の韓氏意拳を学んでおり、そういった経緯から身体と意識、ジェンダーの問題に関心をもっています。なお、身体性に関する考察の一端として『FLOW 韓氏意拳の哲学』を2006年に出版しました。

【創発的な視点が得られる文章づくり】
過去の仕事を例にあげれば、叙情的に語られがちだった桑田真澄投手の復活の軌跡を身体論に徹してまとめ、また角界における外国人力士台頭の理由を「ハングリー精神の欠如」といった定番の物語に求めず、日本人の身体の変容をうながす社会背景の変化から捉えるなど、単線の理解に落とし込めないはずの現実の豊かさを損ねることなく把握するよう努めてきました。
出来合いの物語に現象を落とし込む安易さに逃げるのではなく、読後に読み手の類推が働き続けるような文章を心がけています。
また、ビジネスの組織論や技術論においても、たんにノウハウの開陳ではなく、その背景にある発想や視点に留意し、形骸化した知識の伝達にならないよう工夫しています。
アカデミズムであれビジネスであれ、あるいは人物ルポであれ、事象を取り上げる際に心がけているのは、取材対象者が何か行動する、選び取るにあたっての動機への類推と、たたずまいや心情の振れ幅、陰影、哀歓といった機微を合わせて描くことです。

【生産性の指標】
どのような分野であれすぐれた見解と実力を備えている人たちは、各人なりのサクセスストーリーやそれを可能にしたノウハウをもっています。
そういう人に「どのようにして成功したのか?」といった、これまでの道のりや成功の秘訣を訊くことは定石ではある一方、安易だとも思います。
何より取材をされる側も同様のことを他の機会に尋ねられているはずで、飽いているはずです。
だから、ただ記憶を再生すればいいような内容を聞くというのは、相手に退屈を強いることでもあります。できるだけインタビューイがその場で初めて思いを馳せるような質問をしたいと考えています。
もしも無味乾燥な質問のやり取りと、話した内容に正確ではあっても、何の抑揚も陰影もない平板な過去の再現に忠実な文章にまとめたのであれば、インタビューイに提供していただいた時間は何も生んでいないに等しいでしょう。互いに二度と会うこともないのであれば、できればまみえる時間は生産的でありたいところです。
不思議なもので、切り出しが「はじめまして」という変哲のない言葉であっても、人によっては、その一言で相手の心を開いてしまいます。そういう現象が取材の場に置いて立ち上がれば、その時間は生産的だと思います。
「はじめまして」に特別に付された意味はありませんが、確実に何かが互いの間で生まれ、共有されています。
両者のあいだに生じた言葉が思わぬ化学変化を促すとき、言葉のやり取りは、尋ねる/尋ねられるという関係を離れて、その場でしか起きない一回性の出来事をはらみ始めます。
そのようなはからずも舞い降りる豊かな何かを現出させるような取材を行い、文章を書く。そういう仕事をしたいと考えています。

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