「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」

雑報 星の航海術

長らく見たかった「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」を先日ようやく見た。


舞台は1952年の大阪。庄司組の客分だった花木勇(小林旭)は、とある抗争で金光幸司(梅宮辰夫)と衝突、金光は手ひどく痛めつけられる。復讐を果たすべく金光は花木を襲うも返り討ちにあい、病院へ担ぎ込まれる。

ベッドの上で金光が目覚めて知ったのは、花木の血が自分に輸血されていたことだった。金光は激怒し、こう言う。

「おんどれの血が貰えるか! 豚の血の方がましじゃ」

花木は静かに言う。「安心せぇ。ワレとオレとは同じ血や」
これを機に花木と金光は兄弟分となる。

「殺しの軍団」と呼ばれた暴力組織がかつて存在した。山口組の傘下団体、柳川組だ。

小林旭演じる花木勇のモデルは初代柳川組組長、柳川次郎こと梁元錫だろう。
そして、輸血のシーンからわかる通り、梅宮演じる金光もまた朝鮮人である。

媒体名は忘れたが、かつて僕が読んだインタビューによれば、朝鮮人を主人公にした本作へのオファーを断る俳優が多く、小林旭は義侠心に駆られて出演を受けたそうだ。ひとりくらいそういう奴がいてもいいだろうと。

梅宮辰夫の演技がいいんです。

小林旭にせよ梅宮辰夫にせよ、いわゆる「在日問題」(と呼ばれるような問題然とした問題)に精通していたわけではなかろうし、そういうことを勉強したところでキャラクターに奥行きが出るとは思えないが、劇中に日本人ヤクザが「(あいつらは)食いもんが違いますから。食いもんが」と彼らを嘲る中で見せる歯噛み、満腔の怒りには、既存のヤクザすらも所詮はインサイダーである。
そう体感できるシーンが幾度かある。そこは知識の理解では及ばない。

アウトサイダーである彼らには寄りかかるべきプライドもなく、ひたすら己の存在を実力で確保する他に生きる道のない、文字通りのアウトローだった。

金光は「引き下がることは負け」であり、一歩下がることは惨めな人生への後退を意味すると繰り返し言う。どういう状況であれ死守しなくてはならない鉄則なのだと。

状況判断を見失い金光は落命する。それは冷静さを欠いているからか。はたまた、国を失うということがどういうことかを骨の髄から知っているからこその意気地なのか。

花木組がそうであるように、柳川組も山口組の全国制覇の尖兵として全国に乗り込み、「殺しの軍団」の異名をとった。その行き着く先はどうなったか。

本作では、花木組は巨大組織の天誠会の尖兵として活動しながら弊履の如く捨てられる。ナレーションはこう語る。
「花木は天誠会から破門された。だが彼は元々全てから破門されていたのだった」。柳川組についてもあてはまるかもしれない。

なお劇中、花木組と愚連隊が抗争する事件が描かれているが、これは明友会がモデルだろう。これについてはもっと丁寧に描いて欲しかったところだ。明友会事件については、ぜひ『奴らが哭くまえに』を読んで欲しい。