第7号 映画監督 濱口竜介

プリセッションジャーナル
濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)
1978年、神奈川県生。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了製作『PASSION』が国内外の映画祭で高い評価を得る。その後も日韓共同製作「THE DEPTHS」(2010)、東日本大震災の被災者へのインタビューから成る映画「なみのおと」「なみのこえ」、東北地方の民話の記録「うたうひと」(2011~2013/共同監督:酒井耕)、4 時間を超える長編「親密さ」(2012)を監督。濱口竜介 即興演技ワークショップ in Kobeを通して制作された「ハッピーアワー」が第68回ロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。「寝ても覚めても」が2018年公開予定。
2015年に公開されて以来、評価の高さはかねがね耳にしながらも、気がつけば「ハッピーアワー」の上映期間は終わっており、これはいけないと上映している映画館を探し、広島まで足を運んだのは昨秋だった。

登場する30代後半の女性たち4人は互いに親友だと思っていた。そのうちのひとりの離婚をきっかけに各々が隠していた不安や孤独、寂しさが明らかになると、それに伴いに各々の暮らしに軋みが生じ始める。自分は何者で、この人生をどのように生きたかったのか。彼女たちは自らに問い始める。

上映時間の5時間17分はあっという間に過ぎ去り、とてもおもしろいという感覚はあっても、それ以上のことについて言おうとすると、うまく言葉にならない。作品について端的に何か言うことができなかった。

ただ出演している人たちの「本当」の感じが濃く残った。「本当」というのは、その人がその人でありつつ役柄のその人でもあることに疑いようがないということだ。
俳優なら役になりきるのは当たり前だと思うかもしれないが、「ハッピーアワー」に登場していた役者は、キャラクターをうまく演じているのとはまた違う何かを表出していた。そう、表現というよりは表出してしまっている感じだ。

機会があれば一度、監督の濱口竜介さんにどのように映画を撮っているのか聞いてみたいと思っていたところ、願い叶い「プリセッション・ジャーナル」に登場いただくことになった。話はケアと演技、そして「からだ」との関わりから始まった。