第8号 一級建築士 岡啓輔

プリセッションジャーナル
岡啓輔(おか・けいすけ)
1965年、福岡県生まれ。一級建築士。住宅メーカー勤務後、東京で土工、鳶、鉄筋屋、型枠大工など現場経験を積む。2003年、「蟻鱒鳶ル」案がSDレビュー入選。2005年から東京・三田にRC造のビルを作り始める。
 東京・三田の聖坂を登りきる手前に多角形の穴の開いた、剥き出しの鉄筋が木賊のように生えて見えるコンクリートのビルが建っている。名を蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)という。岡啓輔さんが2005年からセルフビルドで作っている建物だ。そのコンクリートの質は200年保つと言われている。

 オリンピックを控え、あちらこちらで再開発が進み、日々ビルが壊され新しく作り変えられていく様を見ている目には、200年というこの先に続く時間の厚みを体現しているビルは、土地を鎮める要石のように、あるいは自然物のようにも見えてくるから不思議だ。

 今回のプリセッションジャーナルは2019年1月26日、鳥取の松崎にある書店「汽水空港」で行われたトークイベントの再録となる。汽水空港の店長、モリテツヤさんの指名により岡さんへのインタビューを公開で行い、その模様をここに掲載することになった。

 モリさんもセルフビルドの人であり、自分で作った店に岡さんを呼びたいとかねて思っていたという。この日は吹雪の荒れ模様の天候ではあったが、満員の観客の中で行なった。作るということに魅せられた人たちのその熱気の断片でも伝えられたらと思う。