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ブログ 雑報 星の航海術

1923年9月1日、鏖殺

 小学生の頃、月に一度は必ず「銭湯へ行くぞ」と言い出す父を奇妙に思っていた。家に風呂があるのに、どうしてわざわざ外へ湯を浴びに行くのかわからなかったからだ。

 しかも銭湯へは街灯も暗い住宅街を行かねばならない。その時分の私は暗がりをひどく嫌っており、ともかく銭湯へ行くことを億劫に感じていた。

 あれは夏も終わろうとする日だった。湯を浴びての帰り、私は買ってもらったアイスを齧りつつ、父と家に向かっていた。オレンジ色の街灯が頼りなく足元を照らす人気のない道に差し掛かると、唐突に父はこう言った。

「昔はな、“ジュウゴエン ゴジュッセン”と言えなかったら殺されたんや」

 なぜそんなことを言い出したのかわからない。それが「15円50銭」を意味していること。そして「誰が誰を殺したのか」も父の声色でわかった。ほんの少し押し殺した、表立てない調子で話されることは、決まって私たちの出自に関することだったからだ。

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 「ジュウゴエン ゴジュッセン」と、アイスの冷たさを舌に感じつつ、ひとりごちてみる。そうして真っ先に思い浮かべたのは、父方の祖母の韓国語の抑揚を引きずった、跛行するような日本語だった。

 祖母はきっとジュウゴエン ゴジュッセンとは言えない。どうしても「チュウコエン コジュッセン」になってしまうだろう。

 家に帰るには丈高い棕櫚と洋館が差し掛ける影も濃い、次の角を曲がらないといけない。見通しの効かない角を曲がるのが嫌いだ。

 いつからかわからないが、誰かが待ち伏せているかもしれないという恐れを抱くようになった。見知らぬ人ではなく、見知った人が待ち受けており、「嗚呼やはり」と思ってしまうことが恐ろしい。

 子供時分の一夜に覚えた感慨を突然思い出したのは、西崎雅夫さんにお会いし、話を伺っての帰り道だった。西崎さんは関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の聞き取りや追悼事業を行っている一般社団法人「ほうせんか」の理事であり、2016年9月1日に刊行された『関東大震災朝鮮人虐殺の記録: 東京地区別1100の証言』の著者だ。

 本著は1100人の証言を丹念に集めた大作であるが、このような時代にあっては、労を多くして益は少ないことも予想された。なるたけ多くの人に読んでもらう上で助力をお願いできまいか。西崎さんの知己である翻訳家のSさんに声をかけられ、「ブログでもよければ」と請け合い、西崎さんに話を伺ったものの、こうして綴るまでに一年近く経ってしまった。

 ヘイトスピーチが白昼堂々と街頭で行われ、都知事をはじめ虐殺の事実を軽く扱う。もしくは「なかった」と発言する手合いが増えている。そんな時節に宛ててものを言うのはひどく心憂い。

 荷が重いと感じつつも、いつかの機会に書かなくてはいけないと思っていたのは、西崎さんにお会いした日の眼に広がった空の青さを忘れられなかったからだ。『関東大震災朝鮮人虐殺の記録』の表紙にも使われている、荒川橋梁の背に広がる青い空。殺された人たちが最後に目にした空は、こんなにも綺麗な青だったのかもしれない。

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 「ほうせんか」の事務局のすぐ目の前は荒川だ。かつてこの辺りに架かっていた旧四ツ木橋では、民間の自警団と軍隊による虐殺が行われた。

 震災時、この橋には火災を逃れた避難民のほか、荒川放水路開削工事や街中の工場で働いていた多くの朝鮮人も逃れてきた。

 だがしかし、罹災者同士の助け合いは生まれなかった。一方の殺意に火をつけたのは「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「集団で襲ってくる」というデマだった。

 西崎さんの話で一番忘れられないのは、文芸評論家である水野明善氏の証言だ。水野氏は当時6歳、父親が人殺しに興奮する姿を目の当たりにしていた。震災直後、水野家は隅田川を超え、荒川の旧四ツ木橋西詰にやってき、疲れ果てた身を横たえるべく、橋桁をたよりに蚊帳を釣って寝入った。

 やがて橋の上から聞こえる「阿鼻叫喚」に眠りは破られた。呻き声はだんだん頭上に迫ってきた。悲鳴が収まりを見せた頃、母親が恐る恐るマッチをすった。ギャッとくぐもった声をあげ、「血よ、血よ」と叫ぶ。

「母はもう1本、もう1本とマッチをつけた。橋上から滴り落ちる液体が蚊帳を伝わる。赤褐色。血だ。私には、阿鼻叫喚のなかに《アイゴー》《哀号》と泣き叫ぶ声がまじっていようなど、聴き分ける分別などあろうはずもなかった」

 頭上から滴り落ちる血は毛布を点々と染めた。水野少年はおののき、彼を抱きしめる母親もまた震えた。

 しばらくすると父親が戻ってきた。
「やった、やったぞ、鮮人めら十数人を血祭りにあげた。不逞鮮人めらアカの奴と一緒になりやがって」

 旧四ツ木橋では、水野氏の父親がそうであったように自警団が朝鮮人を日本刀で切り、竹槍で突き刺し、鳶口で頭を割り、殺した。別の証言者によると、こういう状況だった。
「橋は死体でいっぱいだった。土手にも薪の山があるようにあちこち死体が積んであった」

 習志野騎兵連隊も虐殺に加わった。ある在郷軍人はこう明かす。
「兵隊が殺したとき、みんな万歳、万歳をやりましたよ。殺されたところでは草が血で真っ黒くなっていました」

 一個小隊、つまり20~30人くらいが朝鮮人を二列に並ばせて背中から撃ったという目撃証言もある。二列横隊で24人を殺し、そういう虐殺は「2、3日続いた」。死体はどうしたのか。
「朝鮮人の死体は河原で焼き捨てちゃったよ。憲兵隊の立ち会いのもとに石油と薪で焼いてしまったんだよ。それは何回にもおよんでやった」

虐殺された人たちが埋められていたであろう場所
虐殺された人たちが埋められていた

 虐殺が行われた旧四ツ木橋は解体され今はもうない。私は西崎さんに案内され、殺された人たちが埋められた荒川の河川敷を歩いた。川べりに広がるサッカー場から子供らの歓声が聞こえる。

 西崎さんたちは1982年9月、河川敷の調査を行ったが、遺骨を見つけることはできなかった。それもそのはずで、震災の起きた年の2ヶ月後には、警察によって遺骨は発掘され、どこかへ移送されていたからだ。

 朝鮮人虐殺の全体像はいまなお目当てがつかない。西崎さんによれば「当時の政府が事件を隠蔽してしまったからであり、その後の政府が真相究明のための調査を行なってこなかったから」である。

 事件の公的資料はきわめて少ない中で、何が起きたかを知る手がかりは証言に求めるほかない。しかしながら公文書をはじめ、客観的とされる情報になるものだけに価値を置く人たちはオーラルヒストリーをあてにならないものと軽んじる。

 だが歴史は固形物ではなく、ひとりひとりがいまを生きていることと分かつことができない。あなたがもしも生きている人の切迫した語り、悔恨からの囁き、勇気をふるって口にすることを侮るのであれば、いずれあなたの語りに誰も耳を貸さない態度をあなたは周囲と自らに許していることになる。

 権力やそれが認める客観性に評価される。そのことでしか言葉の確かさが求められないとしたら、暮らしの中で育まれる私たちの言葉は痩せ枯れてしまう一方だ。それは必ず生きている人の存在を軽んじることにつながる。

 死者の声は直接聞くことができない。殺されかけた人、殺された人を見た人、殺した人を見た人、殺した人。さまざまな思いと感情と立場から響く複数の声に耳を傾ける。そのことでしか見えてこない事実は確かにある。

関東大震災朝鮮人虐殺の記録: 東京地区別1100の証言

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Topics 講座のお知らせ

聞くこと話すことベーシック&アドバンス─共感と傾聴以前の基礎体力を身につける─

聞くこと話すことベーシック&アドバンス
─共感と傾聴以前の基礎体力を身につける─

 

 この講座は2022年から東京、大阪、名古屋で開催している「聞くこと話すこと、まとまりのない話の中から大事なことを見抜く力」で行った講座のベーシックとアドバンス編です。(1シリーズ5回で行っている内容については、こちらをご覧ください。

【申込先】
東京のクラス
大阪のクラス


<ベーシックについて>

講座中に「待つ」や「省みる」「観察」について質問が多くされました。そこでベーシッククラスでは、話を聞いたり、話す際の「待つ」や「省みる」「観察」について抽象的ではなく、具体的な動作を通じて内的な状態を体得していきます。
「待つ」や「省みる」「観察」に必要なことはたったひとつ、落ち着くことです。

 瞑想や坐禅やマインドフルネスでも同様のことは言っていると思いますが、常に意識的に暮らし、頭の中が忙しい状態なのに、いきなり坐ったからといって静の状態に入るのは難しいでしょう。

 講座では、立つから座るという落ち着きに向かう動作をまず覚え、静から動を体験してもらう中で、自分に集注するとはどういう状態か?を体験します。そこで現れる身体のまとまり=自分本位になると、「待つ」「省みる」「観察」が可能になってくることがわかります。

 今回は、「なんとなくわかったような気持ち」のまま帰るのではなく、ちゃんと手順を覚えて、皆さんの暮らしの中で日々実践できる内容をお伝えします。
地味ではありますが、基礎体力を養うことができるのではないかと思います。体力といっても筋力の話ではなく、静かでありながら活気に満ちた身体をもたらす力です。


<アドバンスクラスについて>

こちらのクラスのテーマは「動きの中で静止を知る」です。実際にペアになって対話をしていくという動的な状態で、「自分の中の静かなところ」を見つけていきます。

 通常の「聞くこと、話すこと」の講座では繰り返し、「ジャッジしない」ことの重要性について話しました。
このクラスにおいては、あえてジャッジや解決、介入などを行うことで、自分の心中をどのような思いが巡っているかを明らかにし、それを瞬時に消していく試みを行っていきます。
生きている限り葛藤はつきものです。ですが、それを指を弾くくらいの速さで消していくことができれば、葛藤に囚われることは少なくなるのではないでしょうか。

 いつかできることではなく、この刹那においてジャッジを消すという取り組みです。
皆さんのご参加をお待ちしています。


【開催場所と日時】
東京
5月3日:ベーシッククラス
5月4日:アドバンスクラス

会場
浅草公会堂(3日は第3集会室、4日は第2集会室)

時間
13時〜14時30分(14時30分以降は質疑応答)

大阪:5月20日
会場:フロイデ玉造スタジオ6F

時間
10時15分〜11時45分:ベーシッククラス
13時15分〜14時45分:アドバンスクラス
(14時45分以降は質疑応答)

料金
ベーシック、アドバンスとも1コマ6,000円。2コマ参加の場合は10,000円。

当日、会場でお支払い下さい。
講座の内容についてわからないことがありましたらnonsavoir@gmail.comもしくはhttps://lin.ee/se1SoDwを登録いただきご質問ください。

 

【申込先】
東京のクラス
大阪のクラス

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Topics イベント開催のお知らせ

オンライン講座「聞くこと、話すこと」

オンライン講座「聞くこと、話すこと」

日時:4月1日、29日、5月6日、6月10日、6月25日
時間:開場12:45/講座13:00から14:30 /質疑14:30より30分程度
料金:4,000円
当日参加できなくてもアーカイブ視聴できます。

 

チケットを申し込む

 

 この講座は2022年から始めた「聞くこと話すこと、まとまりのない話の中から大事なことを見抜く力」のオンライン講座です。
実地の講座と違って実技はありません。その代わり参加者の皆さんとの対話の時間を多くとって進めていきます。1シーズン5回の講座で構成されています。

4月1日

講座1 「わたしの中の隠れた意図と信念を探る」
テーマ:「知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中」から出てみる
<講座の内容>
座学と対話を通じて以下のことを明らかにしていきます。
・自分が身につけた考えや行いがどこからやって来たのか。
・自分を否定することも大事、肯定するのも大事。どちらも両立する。
・自身の信念や信条が何かを知る。

4月29日
講座2 「耳を傾ける」
テーマ:その人の話を「その人の話」として聞くには
<講座の内容>
相手の話をそのまま聞く。自分の思いを率直に述べる。自身の中で養って来たジャッジの基準を踏まえ、「何事も当たり前だと思わない」で聞き、話す際の重要なポイントについて説明していきます。
・「わかる」とは、身体の運動。把握と認識の違いについて。
・意味に注目しないで聞き、話してみる。
・どんなに理不尽な言動でも、その人なりの必然性がある。

5月6日講座3 「くっついて離れない記憶との付き合い方」
テーマ:体験を経験に置き換える
<講座の内容>
人にはどうしてもこだわってしまう過去の出来事や手放せない記憶があります。それらがあるために苦しかったり、わかってはいても物事を真正面から捉えることができなくなったりします。こだわったり手放せないのは、その人なりの必然性があります。そこを明らかにしていくのが体験を経験に転換する試みです。
・起きた事実と解釈の違いを知る。
・わたしたちが怒りを覚え、悲しみを募らせるメカニズムについて。
・感覚はわたしそのものではない。

6月10日講座4 「寄り添う」
テーマ:距離と距離感の違いを知る
<講座の内容>
共感は人を知るための唯一の道ではありません。共感できないからこそ、より深く自分を相手を知る試みが始まります。自分とは異なる人に近づくための敬意と警戒の重要性について伝えていきます。
・わたしとあなたの違いと隔たりを尊重する。
・自分から相手を観る/相手から自分を観る。
・すれ違うことの大切さ。

6月25日
講座5 「脆さと弱さを尊重する」
テーマ:理解することがとても難しい出来事を前にしての実践
<講座の内容>
自分が体験したこともなければ、想像したこともない出来事を目の当たりにしたとき、つい自分の安全圏からジャッジしたくなります。それは身を守るためではありますが、保身が過ぎると新しい変化を拒絶することにもなりかねません。常に変化し続ける自分を受け入れるにはどうするべきか。そのことについて考えていきます。
・被害者と加害者と解決者と観察者の立場について。
・傷つきやすい繊細さよりも脆弱な自分を大事にする。
・忘れらない記憶との和解。

その他:
・講座終了後、数日内にアーカイブリンクを送ります。ご自身の振り返りなどにご活用ください。

・病気や事故以外でのキャンセルは5日前のお昼12時までお受けします。その際の手数料はご負担ください。
それ以降のキャンセル(ドタキャンなど)はお支払いただいた参加費を返金しません。その旨ご了承ください。
また、急な病気・事故などでのキャンセルについては、開始時間前(可能であれば、開始時間の2、3時間前)までに必ずご連絡ください。peatixのシステム上、開始時間をすぎるとキャンセル処理ができなくなってしまいますのでご注意ください。

【チケットを申し込む

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Topics イベント開催のお知らせ

講座 聞くこと話すこと、まとまりのない話の中から大事なことを見抜く力

聞くこと話すこと、まとまりのない話の中から大事なことを見抜く力

 

 相手の話を聞くにも、自分が話すにも身体なしには始まりません。世の中では、コミュニケーション能力について様々なことが言われています。ところが身体なしにコミュニケーションはあり得ないことが、あんがい見過ごされています。

 私はこれまでにおよそ1500人にのぼる識者へのインタビューや400人近い市井の人たちへのインタビューセッションを行ってきました。その経験を通じて得たセオリーをもとに、「聞くこと話すこと」についての私なりの技と発想を座学と実技で伝えていきます。講座によっては、記憶や痛みなどを取り上げるのも、私の培ってきた観点です。

 知識やうまいやり方を覚えるのではなく、自分の身体にフォーカスした点において、他に類をみない講座だと思います。ぜひそのおもしろさを味わって欲しいと思っています。

東京や大阪、名古屋で定期的に行っていきます。また座学のみオンラインでの開催も検討しています。
ふるってのご参加お待ちしています。

各地の申し込みは以下より

東京/シーズン2
日時:2023年1月14日、28日、2月11日、25日、3月18日
会場:浅草公会堂

東京の申し込み

 

大阪:シーズン1
会場:クレオ大阪東もしくはクレオ大阪中央
2023年1月21日、2月5日、19日、3月5日、19日

<大阪の申し込み>

 

名古屋:シーズン1
会場:名古屋市公会堂
2023年2月26日、3月12日、21日、4月8日、22日

名古屋の申し込み

講座の概要

講座1   「わたしの中の隠れた意図と信念を探る」
座学:「知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中」から出てみる
実技:「話をよく聞く、リラックスして話す」を姿勢から捉えてみる

講座2   「耳を傾ける
座学:その人の話を「その人の話」として聞くには
実技:いつだって本番しかないことを知るための練習

講座3   「くっついて離れない記憶との付き合い方」
座学:体験を経験に置き換える
実技:いつもやって来る、あの緊張と不安と痛みにどう立ち向かうか。

講座4   「寄り添う
座学:距離と距離感の違いを知る
実技:寄り添うことに潜む優しさとコントロールを自覚する

講座5   「脆さと弱さを尊重する」
座学:理解することがとても難しい出来事を前にしての実践
実技:不安と恐怖と脆弱さこそが最大の資源

【料金】
1コマは90分+質疑応答30分で料金は6000円。午前午後を通しで受講する場合は1万円です。

*講座は1日に午前午後の2部制で行い、計5回10コマで構成されています。単発の受講も可能ですが、1と3がリンクしているなど、連続して受けないと講座の内容がわからないこともあります。

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以下に講座のテーマと内容を記します。

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講座1 わたしの中の隠れた意図と信念を探る

 誰かの話を聞いたり、自分が誰かに向けて話す際に、心の中で「それは良い」とか「だから悪い」といったジャッジを無自覚のうちに行いがちです。そういった予断を行っているうちは、相手を知ることができません。
相手をわかろうとするならば、まず自分が何を判断基準にして話を聞き、言葉を口にしているかを理解する必要があります。

【座学】
テーマ:「知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中」から出てみる

<講座の内容>
座学と対話を通じて以下のことを明らかにしていきます。
・自分が身につけた考えや行いがどこからやって来たのか。
・自分を否定することも大事、肯定するのも大事。どちらも両立する。
・自身の信念や信条が何かを知る。

【実技】
テーマ:「話をよく聞く、リラックスして話す」を姿勢から捉えてみる

<講座の内容>
コミュニケーションにおいて、「真摯な姿勢で臨みましょう」とか「相手が話しやすい雰囲気を心がける」といったことが強調されます。でも、具体的にどういう姿勢なのかははっきりしません。ここではコミュニケーションのはかりやすさを身体で検証していきます。
・「正しい姿勢」からリラックスした姿勢へ。
・まず自分に対して自分らしさと寛容な姿勢を許す。
・ほどける気持ちと動きやすさと自立とのつながりについて。

 

 

講座2 耳を傾ける  

 傾聴という語を耳にする機会が増えています。「耳を傾ける」と言うけれど、いったい何に傾けることが「聞く」に値するのでしょう。その行為が果たして理解につながるのは、「どういうときか」について考察していきます。

【座学】
テーマ:その人の話を「その人の話」として聞くには

<講座の内容>
相手の話をそのまま聞く。自分の思いを率直に述べる。自身の中で養って来たジャッジの基準を踏まえ、「何事も当たり前だと思わない」で聞き、話す際の重要なポイントについて説明していきます。
・「わかる」とは、身体の運動。把握と認識の違いについて。
・意味に注目しないで聞き、話してみる。
・どんなに理不尽な言動でも、その人なりの必然性がある。

【実技】
テーマ:いつだって本番しかないことを知るための練習

<講座の内容>
想定された対話の場面を実際にペアになって行ってみます。それを通じて、想定外の出来事を体験していきます。
自分の気持ちや感情を伝えることへの恐れを誰しももっています。恐れを大事にしながらも、そこから一歩進むにはどうすればいいか。その手立ても明らかにしていきます。
・最適解を探すのではなく、真摯な対話を目指す。
・「言っていること」ではなく「言わんとしているのは何か?」に注目する。
・わかるのではなく、「わかろうとすること」ができるだけ。

 

 

講座3 くっついて離れない記憶との付き合い方 

 自分と相容れない価値観の持ち主と出会ったとき、過去の嫌な記憶が蘇ったり、さまざまな感情がうごめき、葛藤が生じます。つい相手に問題があると考えたり、葛藤を解決する正解を求めます。問題は外にはなく、自分の内にあります。自分から逃げず、ダイナミックな変化をもたらす手がかりを探ります。

【座学】
テーマ:体験を経験に置き換える/リカージョンとリピートの違い

<講座の内容>
人にはどうしてもこだわってしまう過去の出来事や手放せない記憶があります。それらがあるために苦しかったり、わかってはいても物事を真正面から捉えることができなくなったりします。こだわったり手放せないのは、その人なりの必然性があります。そこを明らかにしていくのが体験を経験に転換する試みです。
・起きた事実と解釈の違いを知る。
・わたしたちが怒りを覚え、悲しみを募らせるメカニズムについて。
・感覚はわたしそのものではない。

【実技】
テーマ:いつもやって来る、あの緊張と不安と痛みにどう立ち向かうか。

<講座の内容>
苦しみや悲しみ、傷を受けた記憶は身体に現れ、それが緊張や痛み、不安をもたらします。ここでは、それらの感覚をなかったことにするのではなく、大事にしつつそこから離れる道筋をペアに組んでのワークを通じて見つけていきます。
・圧迫感と拘束感の中にわたしの自由を見つける。
・身体まるごとで記憶と対話する。
・体験やそれがもたらす反応に引きずられることなく、自分への信頼という経験を得ていく

 

 

講座4 寄り添う

 “寄り添う”という語も近年よく聞くようになっています。「わたしの望むように寄り添われたい」という願望に応えることがコミュニケーションでしょうか。もしくは優しさでしょうか。コントロールされることを受け入れるのは、寄り添うことなのでしょうか。
わたしとあなたの隔たりについて知らなければ、寄り添うこと。理解することにならないのではないでしょうか。

【座学】
テーマ:距離と距離感の違いを知る

<講座の内容>
共感は人を知るための唯一の道ではありません。共感できないからこそ、より深く自分を相手を知る試みが始まります。自分とは異なる人に近づくための敬意と警戒の重要性について伝えていきます。
・わたしとあなたの違いと隔たりを尊重する。
・自分から相手を観る/相手から自分を観る。
・すれ違うことの大切さ。

【実技】
テーマ:寄り添うことに潜む優しさとコントロールを自覚する

<講座の内容>
寄り添う気持ちだと思っての行いが、無自覚にも相手を自分の思い通りにコントロールすることになり得ます。寄り添うことと自立の尊重について、身体を通じて検証し、体感していきます。
・自分から相手を観る/相手から自分を観る。
・反応しない。でも応変は必要。
・付かず離れずを大事にする。

 

 

講座5 脆さと弱さを尊重する

 正しく物事を認識し、正しく解決していく。そうした正しさは、果たしてわたしたちのあいだに横たわる「わかりあえなさ」を埋めてくれるでしょうか。理想の正しさの実現ではなく、いまの正しくもなく脆く弱い自分から始める。それが真摯な姿ではないでしょうか。

【座学】
テーマ:理解することがとても難しい出来事を前にしての実践

<講座の内容>
自分が体験したこともなければ、想像したこともない出来事を目の当たりにしたとき、つい自分の安全圏からジャッジしたくなります。それは身を守るためではありますが、保身が過ぎると新しい変化を拒絶することにもなりかねません。常に変化し続ける自分を受け入れるにはどうするべきか。そのことについて考えていきます。
・被害者と加害者と解決者と観察者の立場について。
・傷つきやすい繊細さよりも脆弱な自分を大事にする。
・忘れらない記憶との和解。

【実技】
テーマ:不安と恐怖と脆弱さこそが最大の資源

<講座の内容>
グループでの対話という実践を通じて、リアルタイムで自身の強みだけではなく、脆さや弱さを観ていきます。反省や悔悟に引きずられるのではなく、瞬時に改める実践を体験していきます。
・過去や未来にタイムリープしない。
・不安と恐怖と脆さ、弱さの隙間を観る。
・わたしが何よりわたし自身であることから始める。

 

 

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グループインタビューセッション/東京2022年1月30日 

定員に達しました。

グループインタビューセッション
日時:2022年1月30日13時〜17時(途中休憩あります)
場所:上野駅近辺(参加者に追ってお知らせします)
料金:8000円
人数:9名
申込先:こちらのフォームから申し込んでください。

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普段、私はひとりの人を相手に話を聞く、インタビューセッションを行っています。インタビューセッションとは相手の話すことを「ただ聞」くという試みです。「そんなことは簡単だろう」と思うかもしれません。

けれども、だいたいは相手の話を自分の経験で培った良い悪い、正しい誤っているといった基準でジャッジしているだけです。

インタビューセッションはカウンセリングでもなく、問題解決策の提案でもない。ただその人の話を「その人の話」として聞いています。(体験者の感想はこちら
そこで本題のグループセッションとは何か?です。

グループインタビューセッションは何をもたらすか?

自分が身につけた善悪正誤を自覚なしに話し、聞いているとしたら、世間のいう「コミュニケーションが大事」の実態はどういうものなんでしょう。本当は聞いていないし、マウントをとっているだけかもしれません。
グループインタビューセッションの目的のひとつは無自覚に話し、聞く行為がどのような習慣で養われたのかを知っていくことです。自分が気づかないうちに使ってしまう文句、たとえば「そうは言ってもー」とか「結局はー」といった言葉は何を意図しているのか。相手を通じて自身を省みていく時間と言えます。

グループインタビューセッションの進め方

グループインタビューセッションは、参加者がテーマに沿って話したいことを話し、聞く側はただそれを聞きます。意見の押し付けでもなく、共感のアピールでもなく、承認欲求を満たすための言葉遣いをする必要はありません。

今回のテーマ「経験とことば」

「経験とことば」について感じるところを互いに述べ、聞く時間にしたいと思います。「◯◯が正しいと言っていたから」「自分の経験ではー」といった、わりと使いがちなフレーズがあります。どちらもただ話をし、聞く上では不必要です。
というのは、誰かに寄りかかっては相手の話をそのまま受け取ることにはなりませんし、自分の経験に従うのはジャッジであって、やはり人の話をきいてはいません。果たして経験は善悪是非を認めさせるためにあるのでしょうか。

セッションを進めるルール

・自分が話したいことを話してください。
・「ここでは何を話しても大丈夫だ」という安心と安全が得られる時間と空間になるよう皆さんの協力が必要です。
・聞き手はただ聞いてください。
・質問する際は、意見の押しつけや善し悪しの表明でないかに留意してください。
・共感に力を注ぐことは理解への道のりではないと頭の片隅に置いてください。
・話す人も聞く人も解決に向かおうと焦る必要はありません。
・つまり何を話しても大丈夫です。

私は話の流れに沿って質問を行ったり、またヒートアップした際に介入することはあるかもしれませんが、基本は参加している参加した方がセッションを続けられるよう、雰囲気を整えることに傾注します。
皆さんの参加をお待ちしています。

 

グループインタビューセッション申込先